筆者が重要視している、人生で大切な4要素があります。それは健康、仕事、遊び、愛。このうち、土台となるのが健康。
健康のために、食事が重要であることは言うまでもありません。一般の方も、それはご存知でしょうし自覚する部分も多いでしょう。
では、病気にならないため、病気を悪化させないため、健康寿命を延ばすためにできる食事とは、いったいどんなものなのでしょうか。果たして、それは科学的に分かっているのでしょうか。
筆者は代謝学や栄養学の専門家ではありませんが、科学的データを収集して提示・提案することはできます。科学的根拠に基づいた食事療法について調べてみましたので、ご覧ください。
健康的な食事とは
健康的な食事の目標は、健康状態を改善・維持し、疾患のリスクを減少させることです。健康的な食生活によって、寿命を延ばし(JAMA Netw Open. 2021;4(8):e2122277. Epub 2021 Aug 2)、慢性疾患のリスクを減らすことが出来ます。また、体重の管理や高齢者のフレイル予防にもつながります(Am J Med. 2016 Apr;129(4):407-415.e4. Epub 2015 Dec 22) (Mayo Clin Proc. 2023;98(12):1774)。
これらの論文で示された好ましい食事とは、以下のようになります。
- 避けるべきもの:赤身肉(牛、羊、鹿、山羊)、加工肉(ソーセージ、ホットドッグ、ビーフジャーキー)、飽和脂肪酸、砂糖、ナトリウム、アルコール
- 摂取すべきもの:果物、野菜、豆類、ナッツ、全粒穀物
世界保健機関、アメリカ癌研究センター、アメリカ癌学会、アメリカ心臓学会など複数の機関から推奨されている内容です。こうした食事が、死亡率低下と相関があり、健康寿命を長くする可能性もあることが示されています(Nat Med. 2025;31(5):1644. Epub 2025 Mar 24)。
地中海式食事
比較的エビデンスのそろった健康的食事として挙げられることが多いのが、地中海式食事です。地中海式食事を摂ると、脳卒中のリスクが低下したり(N Engl J Med. 2018;378(25):2441. Epub 2018 Jun 13)、心血管疾患発症率・死亡率が減少したりする(Lancet. 2022;399(10338):1876. Epub 2022 May 4) (BMJ. 2023;380:e072003. Epub 2023 Mar 29)など、健康に寄与していることを示すデータがあります。
地中海式食事とは、これといった定義があるわけではありませんが、果物、野菜、全粒穀物、豆類、ナッツ類、種子類を多く摂取する食事法です。不飽和脂肪酸が含まれるオリーブオイルを取り入れていることと、ワインの摂取が特徴的です。いっぽうで、魚、鶏肉、乳製品は適量で、赤身肉はほとんど食べません。この食事法の中のどの食品が有効なのか、あるいは複数の食品の相乗効果によるものなのかはまだ明らかになっていません。
要注意:植物中心の食事(動物性食品制限食、ヴィーガン食)
一部の動物性食品を制限するベジタリアン食や、卵や乳製品を含めたすべての動物性食品を制限するヴィーガン食については、こうした食生活に関連する生活習慣因子と切り離して検討することが難しいとされています。例えば、ヴィーガン食を取り入れている人は、定期的に運動したり、タバコやアルコールを控えたりする習慣を持っているので、食事が健康に対して効果を及ぼしているかどうかを評価しにくいのです。
ただ、観察研究によれば、植物中心の食事は、肥満や冠動脈疾患、高血圧症、2型糖尿病などのリスク低下と相関があったとされています(Am J Clin Nutr. 2009;89(5):1627S. Epub 2009 Mar 11) (JAMA Intern Med. 2024;184(10):1234)。
こうした食事の注意点として、特にヴィーガン食は、カルシウム摂取量の低下により骨密度の低下や骨折リスクの上昇と関連している可能性があります(Nutr Rev. 2019;77(1):1), (Clin Nutr. 2021;40(5):3503. Epub 2020 Dec 7)。メリットだけではなくデメリットもある可能性がある食事法であることを、知っておくべきでしょう。
肥満を改善させる食事療法
あくまで「肥満を改善させる」であり、「痩せる」とは同義ではありません。肥満でない状態から痩せる(体重を落とす、体脂肪を落とす、水分を減らす、筋肉量を落とすなどの広い意味)ためのものではないことに注意してください。
減量の目標と原則
さて、肥満を改善させるには、まず目標を設定することです。最初の減量目標として、体重の5%減が推奨されます。体重を5%以上減らすことで、脂質異常症、高血圧、糖尿病といった心血管疾患の危険因子を軽減することができるためです(Cell Metab. 2016;23(4):591. Epub 2016 Feb 22)。
1日あたり500 kcalのカロリー摂取制限をすると、1週間で0.5 kgの体重減少が見込まれます。しかし、その状態で3-6ヶ月が経つと、エネルギー摂取制限に対する体重の反応が鈍くなり、その後の減量ペースが鈍くなります(Lancet. 2011;378(9793):826)。そのため、減量の停滞期に入った後、さらなるカロリー制限や消費量増加を行う必要があります。
減量プランと原則:
- 理想体重を計算する。身長[m]2 × 22 [kg]
例:身長170 cmなら1.7×1.7×22 = 63.58 kg - 理想体重 1 kgあたり20 kcalの摂取量を、1日の上限カロリーとする。
例:身長170 cmなら 理想体重 63.58×20 = 1,271.6 kcal/日
- カロリーを有する飲み物は禁止
- 加工食品は禁止か最小限に
- トランス脂肪酸を避ける
- 十分な食物繊維を摂取する
- 1日に最低1.5 Lの水またはノンカロリー飲料を飲む
- 食事日記、運動記録、自己体重測定をつける
- タンパク質は理想体重 1 kgあたり1-2 g摂取する。
例:身長170 cmならタンパク質は 63-126 g/日
減量食の内容
減量食の栄養素組成については、
- タンパク質・炭水化物・脂質をバランスよく摂取しつつカロリーを抑えた食事
- 脂質を抑えた低脂肪食
の2つが標準的な方法とされています。1日の脂質摂取量を、エネルギー摂取量全体の30%未満に抑えることが推奨されます(Medline Plus: Diets http://www.nlm.nih.gov/medlineplus/diets.html#cat1 (Accessed on July 19, 2012))。
そのほかの減量食についても言及しておきます。
3. 低炭水化物ダイエットについては、短期的な減量としては低脂肪食よりも効果的であるものの、長期的には効果が低いと考えられています。これは、ダイエット開始12ヶ月時点では、低脂肪食と低炭水化物食の差が消失したというデータが根拠にあるためです(Arch Intern Med. 2006;166(3):285)。ちなみに、低炭水化物食で起きる体重減少は、脂肪の減少によるものではなく、主にグリコーゲンの分解と水分喪失によるものとされています。
4. 高タンパク食(かつ低脂肪食)については、低タンパク食かつ低脂肪食と比較した場合、長期的には体重減少、ウエスト周囲径、脂質、血圧には有意な差は見られませんでした(Nutr J. 2013;12:48. Epub 2013 Apr 15)。
なお、2. 低脂肪食は、肥満でない人にとっては、健康や脂肪率に対する有益な効果はほとんどないか、まったくないとされています(JAMA. 2006;295(6):655) (Cancer Prev Res (Phila). 2014;7(1):42) (Open Heart. 2016;3(2):e000409. Epub 2016 Aug 8)。肥満を解消できれば、脂肪の制限は必要ないと考えて良いでしょう。
まとめ
健康的な食事内容、そして肥満を改善する減量食について紹介しました。高度の肥満には食事療法が欠かせないことを強調しておきます。
各栄養素をバランスよく摂取し、体重を管理する習慣こそが最も重要と言えるでしょう。

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