医者が考える人生の重要習慣④口腔ケア|子供のころから始めるべき習慣

筆者が重要視している、人生で大切な4要素:健康、仕事、遊び、愛のうち、土台となるのが健康。

健康のために、口腔ケアが重要であることが明らかになってきています。特に、高齢になっても自分の歯を使って食事を行うことは、栄養を摂取できるという意味だけでなく、他者との食事を楽しむという社会的行為ができるという意味でも、生活の質に関わる大切なポイントです。

口腔ケアとは、何をすればいいのか。口や歯の健康について調べてみましたので、ご覧ください。

口腔衛生環境が悪いと全身に悪影響が出る

口腔内の異常は、全身の健康や子供の成長発達に影響を及ぼすことが分かってきています。

まず、口腔には①栄養摂取、②発話、③顔貌・顔の表情において重要な役割を担っています。

例えば、口唇口蓋裂という疾患をもつ子どもは、摂食がしにくく、言語療法が必要になり、外観的な問題を伴うことが多いです。中耳炎の合併が多かったり、心理社会的影響を受けたりするリスクもあります(Cleft Palate Craniofac J. 2006;43(5):598)。

より身近な疾患を例に挙げると、小児期に最も多い慢性疾患とされるう歯(=虫歯)。この影響は口腔内にとどまりません。幼児期に中等度以上の虫歯になると、栄養状態や成長・発達に影響を及ぼす可能性があります(J Am Dent Assoc. 2009;140(6):650)。歯の痛みで授業に集中できなかったり、通院治療のために学校を早退・遅刻したりしたことがある人も多いでしょうから、虫歯の厄介さは分かっていただけるでしょう。

そのほか、口腔環境と全身状態との関係について、以下のようなことが示されています。

  • 受動喫煙によって虫歯のリスクが高くなる(Curr Probl Pediatr Adolesc Health Care. 2014;44(8):219. Epub 2014 Jun 25)
  • 母親の歯周病、早産や低出生体重児との間に関連性がある(Ann Periodontol. 1998;3(1):206) (J Periodontol. 1996;67(10 Suppl):1103)

こうした情報は、今後の研究によってさらに明らかになっていくでしょう。

全身状態も口腔の健康や歯科治療に影響を与える

口腔状態が全身の健康に影響を与えるのと同様に、全身の状態も口腔の健康や歯科治療の実施に影響を及ぼします。

歯周病・歯性感染症を起こしやすくなる全身疾患

小児が糖尿病、白血病などの血液造血疾患、好中球機能不全症などの疾患をもっていたり、抗がん剤治療を受けていたりすると、歯周病の発症リスクが高くなるといわれています(J Clin Periodontol. 1996;23(12):1060) (J Periodontol. 1996;67(10 Suppl):1041) (Periodontol 2000. 1997;14:202) (Aust Dent J. 2001;46(1):2)。歯周病の最大の問題点は、歯を喪失してしまうことですから、とても重大です。

さらに、免疫機能が低下する上記の状態だと、歯周膿瘍や口腔顔面感染症などの歯性感染症を起こしやすくなります。また、感染性心内膜炎という重篤な感染症を引き起こすこともあります。抜歯や排膿といった処置が必要となる場合は、抗菌薬を併用するなど十分な配慮が必要です。

口腔の生理機能や恒常性を変化させる全身疾患

唾液量や口腔機能に変化をもたらす疾患や治療薬によって口腔環境に影響を与える例として、以下のようなものが挙げられます。

  • 抗がん剤治療は、粘膜炎や口腔潰瘍を引き起こすことがある。
  • 抗うつ薬によって唾液の分泌量が減少し、虫歯のリスクが高まる場合がある。
  • 抗けいれん薬の一部は、歯肉の過形成を引き起こす。
  • 摂食障害のある患者では、虫歯の発症リスクが高まる。
  • 胃食道逆流症がある子どもは、歯が溶けてしまいやすい。
  • 気管支喘息で使用される吸入ステロイドは、口腔カンジダ症を引き起こす可能性がある。

日本における口腔ケアの内容と目標

これまで示してきたように、口腔衛生環境と全身の健康には密接な関係性があり、口腔環境を整えることによるメリットが分かってきました。例えば、以下のような事実です。

  • 歯の喪失が少なく、よく噛めている者は生活の質および活動能力が高く、運動・視聴覚機能に優れている
  • 口腔衛生状態の改善や、咀嚼能力の改善を図ることが、誤嚥性肺炎の減少や、ADLの改善に有効である(花田信弘 他,高齢者の口腔および全身健康状態に関する疫学研究,口腔衛生会誌,49,1999)
  • 歯の喪失原因の約9割がう蝕と歯周病で占められている(Community Dent.Oral Epidemiol. 1994;22)

こうした科学的エビデンスに基づいて、歯科保健分野での対策がとられるようになっています。日本では、どのような対策がとられているでしょうか。

健康日本21の歯周病予防目標

厚生労働省が政策として定めた国民健康づくり運動<健康日本21>に、「歯の健康」として4つの柱が示されています。その4つとは、歯の喪失の防止(咀嚼機能の維持)、幼児期のう蝕予防、学齢期のう蝕予防等、成人の歯周病予防、です。

各項目について、日本人口集団としての目標値と、それを達成するべく、リスクを減らすための行動内容およびその目標値が掲げられています。詳細は厚生労働省のページを確認していただくとして、本ページではリスク低減のための行動について強調しておきます。ハイライトした個所の行動を心がけ促すようにしてください。
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b6.html

歯の喪失の防止(咀嚼機能の維持)

生涯にわたり自分の歯を20歯以上保つことで健全な咀嚼能力を維持し、健やかで楽しい生活をすごそうとする8020運動が推進されています。そのいっぽうで、50歳以降では平均2年に1本強の歯が喪失し、60歳では17.8歯、80歳以上では4.6歯しか自身の歯がありません。

歯の喪失は50歳前後で急増することから、60歳時点での目標も設定されました。

歯の喪失防止には、定期的な歯石除去、歯面清掃、定期的な口腔診査および早期治療が重要であり、こうした行動が目標設定されています。

〇目標 80歳で20歯以上の自分の歯を有する者の割合 20%以上
    60歳で24歯以上の自分の歯を有する者の割合 50%以上

リスク低減のための行動
・定期的に歯石除去や歯面清掃を受ける
・定期的に歯科検診を受ける

幼児期のう蝕予防

乳歯の虫歯と永久歯の虫歯には強い関連が見られます。つまり、乳幼児期に歯科衛生習慣を身につけ虫歯対策ができれば、生涯を通じて歯の健康を維持できる可能性が高くなることになります。

そこで、3歳児に虫歯がないことが目標に掲げられています。

幼児期の虫歯予防には、歯質の強化のためにフッ化物を歯に塗ること、甘い食品や飲料の摂取回数を減らすことが重要であり、これらの行動目標が設定されています。

〇目標 3歳児におけるう歯のない者の割合 80%以上

リスク低減のための行動
・3歳までにフッ化物歯面塗布を受ける
・間食として甘味食品・飲料を1日3回以上飲食する習慣をなくす

学齢期のう蝕予防等

永久歯がほぼ生えそろう12歳時点で、1人平均の虫歯が2.9歯というデータがあります。

永久歯う歯を予防していくために、12歳児におけるう歯数が目標設定されました。

対策としては、基本的に幼児期と同様で、甘味飲食物を過剰に摂取しないこと、フッ化物が配合された歯磨き粉を使用すること。これらに加え、永久歯の生えそろいに伴って口腔内状況が個々で大きく変化することから、歯垢除去を含めた個別口腔ケアを受けることが重要となります。

〇目標 12歳児における1人平均う歯数 1歯以下

リスク低減のための行動
・学齢期にフッ化物配合歯磨剤を使用している
・学齢期に、最低1年間に1回は個別的歯口清掃指導を受ける

成人の歯周病予防

40歳前後での歯周炎・歯肉炎の有病率は81.2%とされており、これ以降の年齢で歯周病が増悪し喪失歯数も増加することが分かっています。

このため、歯周病の予防、進行防止が目標に設定されています。

歯周病対策として、デンタルフロスや歯間ブラシを使用すること、禁煙することが重要であり、これらの行動目標が設定されています。

〇目標 40、50歳における進行した歯周炎に罹患している者(4mm以上の歯周ポケットを有する者)の割合 3割以上の減少

リスク低減のための行動
・40、50歳に歯間部清掃用器具を使用している
・喫煙が健康に及ぼす影響について知識をもつ

・禁煙(支援プログラムを受ける)

口腔ケアの重要性についてまとめてみました。おいしいものを自分で食べられることが、長い人生において非常に重要であることは、皆さんも想像しやすいことと思います。

筆者は、少なくとも眠前の歯磨きの前にデンタルフロスを使用することを習慣化しました。小さな行動も習慣化すれば絶大な効果につながります。自分の歯という将来の財産のために、努力を続けてみましょう。

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