医師のキャリアについて、別記事に解説してみました。また、医師についても一個人としての人生があり、どのように満足感を高めて生きていくかについても考えてみました。その上で、どのようなプランを描いたらよいでしょうか?
ここでは、筆者が考えるキャリアプランを例示して、一つの答えを出してみようと思います。着地点や目標を設定しておくほうが、きっと道を進みやすくなるだろうと思い、羅針盤にしてもらえればと思いながら考察してみます。
①専攻科の候補を挙げておく
まずは学部生のうちに、自身が何科の疾患に興味があるのか、どの臓器に興味があるのかをランク付けしてみましょう。
筆者は悪性腫瘍には興味が持てなかったため、悪性腫瘍を診療する科については☆1つとしました。外科系科目には興味を持てなかったので、これらも☆1つ。神経疾患は学問としては非常に興味深いものの、難しすぎて不得意だったため☆2としました。内分泌疾患は面白いけれど、糖尿病は特に興味がなかったため、糖尿病・内分泌内科は☆2でした。眼科疾患は面白そうだと思ったため、☆5つ。そして、膠原病は最も興味を持てたため、☆5つ。循環器内科は、忙しいだろうけど内科の花形だし、間違いなく世の中に必要なので、☆4つ。
このような感じで、「進むならこの科かな」という興味付けを意識しながら学んでおくのがオススメ。
②大学院に行く可能性があるか考えておく
研究にしか興味がない、という医師もいます。皆さんは、そういったタイプでしょうか。
現実的には、研究医として生きていくには大学院に進学する必要があります。大学院に進学して研究の世界を体験するかどうかは、医師として大きな分かれ道になります。
これも学部生のうちに、大学で研究している教員や研究室の雰囲気を感じておくことが大切です。最近の医学部には、希望する学生には早期に研究を体験することが可能な特別コースやカリキュラムが用意されている傾向があります。興味がある場合は、早いうちに研究に触れてみるのが良いでしょう。
もちろん、医学部を卒業して臨床研修を行いながら、大学院について考えるのでも全く遅くありません。臨床研修やレジデントの間に、興味を持った疾患を解明したいと思うこともあるでしょう。
いずれのタイミングでも、自身の興味のアンテナを張っておくことが大切です。
③医局に所属する場合を考え、医局の方針や雰囲気を確認しておく
これも非常に重要な、医師人生を大きく左右する選択のひとつです。医局に属するかどうか。
現在の医局制度とは、大学の診療科・研究科の教授をもとに形成されるグループであり、「そこに所属する医師がどこの病院で勤務するかを割り当て調整する人事組織」と言えばおおむね良いでしょう。
医局に所属する大きなメリットは、職場を自分で探す必要がないというところ。新専門医制度では、後期研修を少なくとも2つの研修施設で修めなければなりません。個人の場合は自身の経歴のみで応募し採用してもらわなければなりません。いっぽう、医局に属している場合は、医局の人事権を使用してもらうことにより、ある程度優先して採用してもらうことが出来る場合が多いのです。
医局に所属するデメリットは、抜けるのに大きな労力(精神的エネルギー)を要するところです。教授や医局人事担当者にお願いして入局した手前、「やっぱり辞めたいです」と言い出すのは、人間として信用を失いかねない行動ですし、実際にそれを実行するのは大変なストレスになります。もちろん、自身の興味が当該科から薄れてしまった場合はやむを得ないでしょう。フリーランス、あるいは別の医局に入りなおして再スタートすることになります。
医局に属する生き方を考えてみて、その可能性がありそうなら、大学の医局に出入りして雰囲気をつかんだり、先輩医師に話を聞いてみたりすることも大事なプロセスです。特に、女性医師の妊娠出産時の医局対応は男女問わず働き方に直結しやすい部分であるため、さりげなく確認しておくのが良いでしょう。
④専攻医プログラム病院の目処が立てば、臨床研修病院は好きなところで働く
医学部6年生になると、初期臨床研修を行う病院のマッチング登録が行われます。就職先を選ぶ、いわゆる就職活動に相当します。
①で示した、将来専攻したいと思う科が絞り込めていれば、初期研修を行う病院は、特に深く考えずに選んでも良いかと思っています。膠原病科や血液内科のような科が一部そろっていない施設でも、初期研修先は問題ありません。そういった科は、後期研修病院でもローテ―ト出来るからです。給与面で選んでも良いし、単純に生活してみたい場所でも良いでしょう。
ただし、その前提条件として、後期研修先である専攻医プログラム病院の目処が立っていることを挙げておきます。専攻医プログラム病院を先に決めておく(候補を絞っておく)、ということです。専門性を身に着ける後期研修を行う病院に希望通り採用してもらえるように、医局人事担当に根回ししておく、といったことが有効になります。
⑤専攻医になったら専門医試験に必要な症例集めと試験勉強を直ちに始める
医師3年目、専攻医になったら、これまで以上にとにかく必死に勉強して知識とスキルを身に付けます。それと同時に、今後取得する予定の専門医資格について調べ、受験資格に必要とされる症例を記録し症例報告を作成する作業を開始します。症例報告は、症例経験から時間がたてばたつほど記憶や印象が薄れ、作成に時間がかかってしまいます。面倒でも、担当した症例をどんどんまとめていくようにしましょう。くれぐれも、まとめて症例報告を作成しようと計画してはいけません。必ず挫折するためです。
また、専門医試験には、日々の臨床にもすぐに応用できる問題が多く出題されるため、過去問を解くスタイルの試験勉強も並行して進められれば理想的です。直近の過去問集から購入して、余裕があれば過去にさかのぼっていく方法が効率的でしょう。
なお、後期研修医になると、アルバイトが解禁になります。収入を上げるため、あるいは他病院での病棟管理や救急外来で経験を積みたいという目的があれば、アルバイトをしてもよいでしょう。ただし、専攻医として勤務する病院で、土日も主治医がメインとなって診療する体制であれば、アルバイトを詰め込むのは医療安全および精神衛生上、オススメしません。患者の病態悪化時に、病棟から個人的に呼び出しがかかる可能性があるためです。チーム制などで、土日の急変対応が主治医に固定されておらず当番制になっていることが理想的です。今後はそういったチーム医療が主体になってくるでしょう。
⑥専門医資格を取得し、スタッフとしてキャリアを積む
医師7年目頃になると、多くの専門医試験資格が得られる時期になります。なるべく早く専門医を取得し、周囲へアピールしましょう。専門医資格を持っていれば、医局からの評価も高くなります(研修医やレジデントを受け入れるための専門研修連携施設には指導医が必要であり、指導医資格のためには専門医資格が必要なため)。
専門医資格をもったスタッフがすべきことは、(ア)レジデントの育成、(イ)論文投稿・作成指導、(ウ)治験・臨床試験参加、(エ)臨床面の業績拡大です。大学病院でなくても、上記の(ア)~(ウ)によって教育と研究も実践可能です。レジデントに、学会プレゼンテーションや論文の指導をすれば、それも上司としての評価になり、医局へもポジティブなフィードバックがなされるでしょう。
(エ)は病院の収支・経営面に影響する部分であり、さらに上の役職になった場合により求められるようになるでしょう。若手スタッフとしては、臨床をメインにしていくよりも、上記のような役割を担うことが求められている場合が多いです。医局担当者ともよく話し、情報共有しておきましょう。
⑦スタッフ業務に面白さを感じれば、病院幹部を目指す。感じなければ、副業を始める
部長・科長クラスにキャリアが進むと、院長・副院長などの病院幹部と毎月のように診療経営会議を行います。科としての診療実績や経営収支を問われ、外来新患患者の開拓や病床稼働率などの運営改善を求められます。
日々、数字と向き合いながらの業務になるでしょう。そういったデータを手に改善を繰り返す、PDCAを回すということを面白いと感じれば、部長・科長として結果を出すことが出来るでしょう。結果として、そういった有能なリーダーは副院長・病院長といったポストに進むことが出来るかもしれません。病院経営をしてみたいという野望がある方は、ぜひこの道を究めて進んでいってはどうでしょうか。
逆に、そういった業務は苦手、あるいは経営幹部からプレッシャーをかけられることを嫌だと感じる場合は、医師として昇進することが難しくなります。一般スタッフとしてのポジションにとどまることになるでしょう。
そのまま淡々と業務をこなすだけでも生活には困らないはずですが、少し視点を変えてみるのはどうでしょうか。それまでの医師人生で培ったことを経験に、開業してみてもよいでしょうし、医療ベンチャーを立ち上げる構想を練ってみてもよいでしょう。自分のビジネスを起こすことや副業をスタートしてみることを考える時期として、ピッタリだと思います。第二の人生をどうしたいか、よく考えてみてはいかがでしょうか。
まとめ
医師になってから15年程度の、いわゆる第一の人生としてのキャリアプランを描いてみました。
人生100年時代。定年が延びるかもしれないとは言え、70歳以降の人生はまだまだ数十年あると予想されます。勤務医だけの人生で終わってしまうのは、もったいない気がしませんか?
40歳頃からは、第二の人生。そう考えて、医師もセカンドキャリアの可能性を模索していくべきではないかと提案します。

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